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ホントはよく見ていた
日高照美
 うちは主人と私と二人だけの家族なんですけども、主人はすごく人付き合いっていうか、対人関係がダメな人で、親子、きょうだい間もダメなんですね。お兄さん、お姉さんがいるんですけど、お兄さんの住所、お姉さんの住所も、わかってないんです。
 私が嫁に来て、法事なんかで会って、お姉さんの番号を聞いて、私が控えておくみたいな、そのぐらい人と付き合うことができないし、主人のことを“この人、気が利かないし……”って。
 私のこころっていうのか、そういうのをしゃべっても聞いてもくれないし、自分でも「しゃべることはしたくない」って。だから、私の中で“この人はこういう人”というものをつくりあげて、ずっと、思っていたんですね。

 で、お盆がありましたよね。それぞれの実家に行くんですけれど、いつもそうなんですけど、うちの実家に行くと主人は寝るんです。私の実家で。
 というのは、私は母やきょうだいたちとおしゃべりしたいし、たまに会うもんだから、女同士でワーキャー、ワーキャーする間、うちの主人はさっき言ったみたいにコミュニケーション下手な人だから、ポツンってなるんですね。
 それで、「いいよ、寝てても」とか言うと、「くー」って、寝ているというお盆なんです。でも、帰り際とかに「お義父さんは、こういう話をしてた」っていうのを、いっつも、ちゃんと言うんですね。
 私はお父さんが何をしゃべっていたかなんか、全然、聞いてないんですけど、主人は「お義父さんは、パソコンのなんとかっていうやつが欲しいって言ってたよ」って。「この前も言ってた」とか言って、「だから、お義父さんはああやって、ずーっと、カタログを見てるんだよなぁ」って。“すごい細かいことを見てるんだなぁ”と思って……。

 今度、日高のうちに行っても、いつも自分の父母のことをあんまりよく言わないんですけれども、やっぱり、帰り際に「お父さんは最近、ちょっと、身体がえらいのかなぁ」って。「焼酎じゃなくて、ウーロン茶を飲んでた」って言うんですよ。
 “えーっ!?”と思って、私は全然、そんなことを見てなくて、主人は“そういうことをちゃんと見ている人なんだぁ”と思って、私が主人に“ヘンなレッテルっていうのを貼っていたのかなぁ”と。
 家族のことを見てこなかった自分だったので、ここの会にきて、今、“主人のことをちゃんと見たいなぁ”と思ってるんだけど、そんなことさえも今まで気がつかなかった私だったんですけど、やっぱり、ちゃんと、少しずつでも“自分の家族を見ていきたいなぁ”って思いました。
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