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明日への確かな一歩
光部芳孝
 「この“自分”でいい」っていうことに気づいたら、「縛られていた自分」に気づいたんですよ。こういう、いろんな場所へ来るとね、“いい人にならなきゃいけない自分”がいたりして、自分を殺しちゃう。だから、“怒らない人は、いい人だろう”と思ってきたし、特に「怒る」っていうことを殺して、生きてきたような気がします。
 やっぱり、家庭でもそうでしたし、みんなに対してもそうでした。でも、それがね、“そうじゃなくていいんだ”って気づいたら、すごいラクになってきたんですよ。
 話すことによって、家族がどんどん好きになっていく自分がいたり、そういうとこが見えてきて、そうすると、僕、子どもたちにあだ名で、うちで“ヨチャヨチャオ”って呼ばれていまして、子どもが「ヨチャヨチャ」って言って、来るんですよ。
 こないだもね、会合が終わって帰った時に、「ヨチャ、今日、シュート2本、決めたよ!」って言うんですよね。で、シュートを2本、決めたかどうかは、どっちでもいいんだけど、子どもが嬉しいことを親父に言ってくる、“あっ、この繋がりがあるやん。うちは”ってね、そうやって思える。
 それがホントに、小さなことでも嬉しくて、“この家族でいいんだな”って思える。そうすると、また、「この“自分”で、なにができるんだ」っていうとこへ話がくるんです。

 東海地区のみなさんもそうだと思いますけど、仕事が去年の秋から間違いなく、どんどん、どんどん減って、「もう、オレ、今週でおしまいだよ」、「仕事がなくなっちゃうんだよ」っていう人たちと、たくさん、会話をしてきました。ホントに、この何ヶ月間、そんな話ばっかりです。
 うちもね、そんな状況になれば、いっぱい、いっぱいで、なんとか10年。建て売りを買って、ローンを払ってきました。でも、それが「もう、じゃあ、給料が半分だ」っていう話になったら、もう払えないですよね。で、その時にね、まず、嫁さんと話しようって。
 嫁さんと話す時に、「住宅ローン、払えなくなるかも知んない」って。「でもね 家族4人ばらばらになりたくない。オレ、この家族がいいんだ」って。「だから、払えなかったら、ごめんな。でも、この家族の方が大事だよな」って、やっぱり、話ができた。その自分が嬉しくて……。
 でも、今、ホントに、毎日、仕事に出れば、苦しい思いをしています。その中で、さっき言ったように、子どもが「ヨチャ、今日、シュート、決めたんだよ」って言ってくれる、その言葉が、ホントになんていうか、「じゃあ、この“自分”で何できるんだ。あきらめられないぞ」って。
 やれることをやって、どこまでやれるかわかんないけど、できなくなったら、家族に「ごめん。オレここまでしかできないよ」って言える、この家族だからこそ……。負けてないって、思えるんだろうなって。

 今、こういう思いを東海の会合へ出席させてもらって、いろんな話を聞いて、また、どんどん話すことによって、きっと、みなさんもそういう時はそうだと思うんだけど、気持ちがいっぱい絡まっていると思うんですよ。でも、自分が話すことによって、その糸が少しずつ少しずつ、ほどけていく。
 ほどけていくと、「じゃあ、自分、なにできるんだ」って。「これ、がんばってみよう」って。「支えてくれている人いるじゃないか」って。そうすると、今、家族4人だけのことを話したんだけど、そう思える自分に育ててくれた両親というのも感謝できるし、嫁さんの両親もやっぱり、今、健在で応援してくれているって、まわりが見えてくるんですよね。
 そしたら、やっぱり、頑張らなきゃ!と、頑張れる自分っていうのを今、感じさせてもらっています。
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