film
ココロノチカラ
須藤京子
 本当にお尻が重たくなっちゃって、全然、動かないでいて、去年、階段から転げ落ちちゃって、それから、もう……、人生、なんて言うのかなぁ? 今までの人生の中で、私は“生きていたってしようがねぇなぁ”なんて思ったこと、一度もなかったのに……。
 ほんで、階段から落ちる前に大きな病気もしたんだけど、食べるもんでも、なん でも、塩分はダメ、水はこんだけしか飲んじゃダメって。食べる物にね、ものすごい、一苦労しちゃって……。
 ほんで、今までいた娘っちはみんな結婚しちゃって、うちらのそばから離れて、誰もいない。嫁とも離れて暮らしている。だけど、“どうしたらいいのかなぁ?” なんて、相談するのもイヤだから、自分で一生懸命、考えながら、本を見ながらやってんだけど……。

 それで、お父さんは「お母さん。おつかい行くのは、僕がちゃんと行ってやるから、仕事から帰って来るまで待ってな」なんて言って、優しい言葉はかけてくれるんだけど、それも、何もかもが面倒くさくなっちゃうんだよね。
 “あっ、これが病気なのか”って。“あっ、こんな病気に負けちゃいかんいかん” と思って、また、張り切ってやるんだけど、一日、二日すると、また、ガクッと落っこっちゃって、“あぁ、歳をとったっていうことは、こういうことなのかなぁ”って。
 だけど、“80歳 、90歳でも、元気な人は元気じゃん”って。“それに、お前、病気だって良くなっているのに、なんで、そんな落ち込むんだ?”っていうのは……。
 他人(ひと)としゃべらないからだよね。 私は、そこに気づいたんです。
 一人でテレビを見ていても、ゲラゲラ笑うけど、答えてはくんない。こっちは 「あのバーカ」、「このバーカ」なんて言ったって、相手はなんにも受け止めてくんない。こんなに寂しくなったのって、初めてで、“みんな、そうなのかなぁ!?”って思った時に……、“あっ、そうだ! これから、『聞く 語る』のつどいをちゃんと、やりゃいいじゃん!”って。
 月一遍でも、何回か、あっちこっち歩いていれば、自分の……、その……、な に、“心の力”って言ったら、おかしいけど、励む力になるじゃないかって。

 本当に“生かされた、いのち”というのは、“本当に、大事にしなきゃいけない”っていうことは、私はなんにも大事にしてなかった。
 “あぁ、死にゃあ、楽になるだろう”と。そんなことばっか、考えて、“やっぱ、死ぬと、泣く人も何人かいるのかなぁ”とか、そんなことばっか、指折り数えて、“あぁ、だけど、それじゃあ、自分に対してよくない”って。
 “本来の私じゃなんじゃないか”と思って、“よし! 今日は勇気を出して、 『聞く 語る』のつどいに出て、ここから、みんなの話を聞いて、自分に力をつけて、頑張っていこうかなぁ”と思って、今日は参加しました。よろしくお願いします!
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