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ハケン社員との関わりの中で
足立正行
 会社の事業見直しの関係で、昨年の7月に新しい職場に行ったわけなんですね。その職場では僕が一番、年寄りになってしまったんです。若い中に自分がポッと入ってしまって、初めての仕事で何一つするにしても聞かないと自分の仕事がやれない。
 で、若い子の会話が通じないというか……、話しても返ってこない。また、非常に暗い、ボーッとやっている雰囲気についていけなくて、とても苦しみました。
 特に一人、派遣の若い20代の女性がいて、僕の子どもより若いと思うんです。その彼女と一緒に仕事をするんですけど、彼女に教えてもらわないと自分の次の仕事ができない。そのつらさと“僕は社員、社員じゃないか。52歳までやってきとるやないか”という変なプライドがありまして、なかなかとけ込めない、とけ込まないっていうところがありました。

 それが、親父の祥月命日に「青経巻(お経)」をあげていたんですよね。で、あげていた途中に、“今、「しあわせになる」とか、「しあわせ」って、在家仏教こころの会で言うてるよね”と思う問答が自分にありまして、“あー、俺はどうなのかな?”と。“確かに会社は苦しいけど、家族とか、親、子ども、そういうまわりの中で生きている自分はしあわせやなぁ、しあわせと思えるなぁ”、“あー、俺は嬉しいなぁ”。それは“親父がいてて、その親父の積み重ねで、今の僕があんのやなぁ”って。
 今まで親父のことは感謝っていうとこまでいかなくて、当たり前に思ってしまっている自分がどっかにあったんですよね。で、お経が終わった頃には、正直、こころから「お父さん、ありがとう」、「ありがとう」と言うて、言葉に言える自分がそこにいてたんです。それからです。

 よく考えていきますと、人を見下げている自分があったちゅうことに、その後、考えていくと思い当たる自分がでてくるんです。嫁や子どもにも「一緒にやろうや、仲良くやろうや」って言うてるんやけど、本音の自分は違うんですわ。友達とか、まわりの人とか、ほかの人に対しても、自分が上に立っているようなヘンな誤解をして、見下げている自分があったなって。
 それを僕は亡くなった親父との会話の中で、僕は親父と問答したつもりなんですけど、そういう中で教えてもらった、感じさせてもらった。で、こころが変わると、会社に行って、その彼女との関わりがねぇ、「徐々に」と言うよりも、その時点で“パッ”と壁がなくなったような気持ちになるぐらい変わっていくんです。
 そっから、先が良い方向に……、自分がその中にとけ込める。その彼女に自分の思いも言えるし、同じ会話の中で楽しく仕事ができる、居場所を一緒に求めることができた。だから、やっぱり、自分のこころがね、自分のこころがまず、大事なんやなぁと。
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