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Vol.132
歩き始めた!
名幸有香さん
 今日は、両親に感謝に来ました。ずっと、虐待されているって、私は思ってました。お母さんは、お父さんとの喧嘩の中で、いつもいっぱいいっぱいで、私の思いを聞いてくれることはありませんでした。私は幼稚園生の頃から、それを“なるほどな”とどこかで感じ取って、“この家族を守るためには、私が全てを受け入れなければいけない”と思っていました。
 だから、なるべく、わがままを言わず、なるべく、学校の中で問題を起こさず、なるべく、お父さんとお母さんが機嫌悪い時は良い子でいて、ニコニコしてて、学校でイヤなことがあってもイヤなことがないように振舞ってました。
 それを大学生の頃まで続けてきたときに、自分を見失っていて、社会にこれから出るというのに、自分の考えが全くなくて、これから先どうやって生きていったら良いのか、分からなくて、苦しかったです。
 ただ、私が今、30歳になるんですが、この10年間、社会の中で揉まれてきて、気づいたことは、両親も社会の中で孤独だったんだなぁと思うことでした。私は自分だけが辛いのかと思ってました。両親と話し合いもできず、自分の気持ちも伝えることができず、ずーっと、もがき苦しんで、苛立った時は物に当たって、悲しかった時は包丁も持ち出したこともあります。けれども、なんとか、きっと生きていれば、きっと大丈夫だって、言ってくれる人たちの言葉を信じて、ここまでやってきました。
 それで、ここまできて、お父さんとお母さんに、やっと思いが通じて、今日はここの会場に一緒に来てくれました。お父さんとお母さんも、ものすごく辛い人生を子どもの時から送ってきたことを私も理解しました。ただそれだけで、自分をいじめてきたことについては、やっぱり、許せないところも正直あります。ただ、“同じなんだ”って思いました。
 お父さんとお母さんも両親からされてきたこと、“辛いことがすごくたくさんあったんだなぁ”と。そんで考えたのは、“おじいちゃんとおばあちゃんが悪いんだ”って思ってしまってました。でも、おじいちゃんとおばあちゃんも、戦争で壊れた日本の中で苦しんで、“もう、生きることだけ精いっぱいやってきたんだ”って思ったら、“もう、全部許そう”って。許そうと言うか、“理解したい”っていう気持ちに変わりました。
 だから、許せなくても、理解をしようっていうその気持ちがすごく大事なのかなって思って、それを思ったら、お父さんも今日、何十年かぶりにここに来てくれたので、私は本当に、両親に今、生んでくれてありがとうって言います。ありがとうございました。