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Vol.126
魔法のことば
升田恵子さん
 『こころ菌』の中に「魔法の言葉」っていうページがあるんですけれども、素敵な詩で、このお話のきっかけになった詩でもありますので、まず、ちょっと紹介させてください。


「魔法の言葉」

ありがとうって言ったら
こころのモヤモヤが消えたよ
ありがとうって言ったら
やさしいこころになれたよ

みんな
まあるい笑顔が好き
みんな
誰かの仲よし

ありがとうって言ったら
あの子と友だちになれたよ
ありがとうって言ったら
こころが魔法にかかったよ

ありがとう


 っていう、本当、とても素敵な詩なんです。
 私は小学校6年生の娘と3年生の息子がおりまして、二人ね、最近、小学生の高学年になって、いろんなことがわかってきて、すごい、家でケンカが多いんですね。いろんなことで小競り合いするというか、例えば、ゲーム機の充電を誰かが使ったとか、ゲームのソフトを使ったとか、もう、いろんな、小さなことでケンカが勃発しまして、その二人のやり取りを黙って、じーっと聞いてたら、すごい言葉の掛け合いも言葉が汚いっていうんですか?
 あの、「うざい」とかね、「あっち、行け」とか、「消えろ」とか。挙げ句の果てには「死ね」っていう言葉がでてきたりして、で、その言葉を聞いた時にブチッて切れて、「二人、ちょっとおいで」と話をしました。「言葉って、不思議な力があるの、知ってる? 『死ね』って言ったら、その通りになることだってあるんやよ」って。「お姉ちゃんが死んだらどうすんの!」って言ったら、息子が「それは、嫌や」って、やっぱり、言うんですね。やっぱり、勢いで言っちゃっているんですよ。
 で、すごいね、親として悲しい気持ちになりまして、「あー、もう、本当、悲しい。そういう言葉のかけ合い、やめようよ!」ってなりまして、ちょっとしんみりなっていたんですけど、私、結構、真剣に怒っていたんで、逆に「嬉しい言葉ってなんやと思う?」って聞いてみたんです。そしたら、しばらく黙り込んで、「大好き」とか、「ありがとう」っていう言葉が息子の口からでてきたので、私、この『こころ菌』の本はいつも、この絵も大好きなので飾っているんですよ。その時に「魔法の言葉」を思い出して、二人にね、「ちょっと聞いてみて」と言って、読み聞かせをしてみました。
 二人、じーっと聞いてました。で、子どもが「『ありがとうって言ったら友達になれたよ』っていうのは分かる」って。「ありがとうって言ったら、ニコッと笑ってくれた」って、そんなことを話してくれました。そういう「ありがとう」を通じて、子どもたちもなんか、ちょっと気持ちがほぐれたみたいで、本当にむっちゃケンカしてた中やったんですけど、弟の方がお姉ちゃんに「お姉ちゃん、今日も一日、ありがとう」って言ったんですよ。
ほんで、お姉ちゃんは「このタイミングでありがとうって、ちょっと意味わからへんけど、んー? まあ、ありがとう」と言って、二人でかけ合って、それで、なんかちょっと輪がほぐれて、「な!」って。やっぱり、ほーらほらほら、こうやって、「『ありがとう』って言ったら、気持ちほぐれたよなぁ」って。「こういう言葉、いっぱい使っていこうや」っていう話をその時にしました。
 で、その「一日、ありがとう」って、子どもが言った時に、子どもたちはまだ0歳児で、ずーっとね、保育園に預けてましたので、最後、いつも寝る前に「今日も一日、保育園、頑張ってくれて、ありがとう!」、「元気で、怪我もせんといてくれて、ありがとう!」って。ちっちゃい子どもを一人ひとり抱きしめて、毎日、寝てたんですよ。
 その時の、その時代のことを思い出して、“あぁ、あの時って、本当に、子どもが無事に、元気で、今日も終わること、ありがとうって、こころから感謝してたよな”っていうことを気づかせてもらいました。また、子どもが大きくなって、あえて、そういうことを言わなくなってきてしまってるんですけど、本当に“この言葉って大事にしていかなあかんな”っていうことを、この「魔法の言葉」で、すごい、気づかせてもらいました。