No.54

会えてうれしい!話せてうれしい!

福島県いわき市 阿部 正洋(37歳)

 

俺の仕事は土建屋で、地震の時も、ブロック積みの現場をやっていました。地震の揺れがおさまると、そこの家に寝たきりのオバアサンがいたので、避難させなきゃってことで、すぐに軽トラックの後ろに乗せて、近くの避難所まで行きました。

でも、橋を渡っている時に車が進まなくなって、そしたらその下の川に二メートル以上の波が砕けずに、その高さのままで迫ってきました。家や車や豚など、いろんなものを引っ張って流れてきて、本当に恐ろしかったです。何も考えずに親切心でオバアサンを避難させたけど、もし巻き込まれて死んじゃっていたらって……って。あの時は本当に考えさせられました。

うちは親父と祖母ちゃんと俺の三人暮らしで家も山の中だったから、みんな無事で被害も少なかったんです。停電で電気は止まりましたが、水は井戸から汲んでいたのでいくらでも出ました。
日頃は、田舎で通勤も不便で、ほんとにとんでもないところだなって祖父ちゃんを恨んでいました。でも、今回の震災で無事だったのは、ここに土地を見つけて、開墾してくれた祖父ちゃんのおかげだなって。祖母ちゃんも、「祖父ちゃんに感謝だな」って、泣いていました。

二週間ぐらい経って仕事が始まり、瓦礫片付けから始めることになりました。周りは大変なことになっているのに、それまで家にずっといて動かなかったんで、太ってしまって、このままどうなってしまうのかなって思ってたんです。普通の生活もできないし、周りとも電話でしか話せなくてすごく不安でした。このまま仕事も町も無くなってしまったらどうしようって。だから、「明日から仕事やるからな」って言われた時は喜んで行きました。やっとやることができて、本当にうれしかったです。
でも現場は惨たんたる状態でした。重機でどんどん瓦礫を集めていくのですが、捜索も同時にやってるので、重機でたまに亡くなった方を掴んでしまう時があって……。機械はすごい力なので、まるでぬいぐるみを上げるように、フワッと上がるんです。

そんな事が何回かあって、しばらくはご飯も食べられない時期がありました。それでもやらなきゃ終わらないし、立ち止まってなんかいられない。だから気持ちを押し殺してやっていました。でも、人間てすごいなって思うのは、三、四日ぐらい経つと、ご飯が食べられるようになるんです。すごいなって思いました。

今までの仕事は、無駄と思われている橋や道路をたくさん造ってきましたが、今は誰もが本当に必要なものを造っています。だから、普段は苦情が多い仕事なのですが、今は「ありがとう」って言われて、自分の生活も大変なのに、バナナやお饅頭をくれるんです。 
すごくうれしいなって思いました。

先週久しぶりに東京で友達と会って、本当にうれしかったです。ずっとしゃべりたかったし、集まりたかった。つどいをやらされていると思ってたときは億劫でしたが、今回は二カ月ほど現実から離れたような生活をしてたので本当にうれしかったです。
今日も、仙台でみんなに会えて、「無事で良かった。生きてて良かったね」って会話ができて、これは当たり前でないんだってことを本当に実感しました。今は話せるのがすごくうれしい。このうれしさがみんなにもだんだん広がっていけばいいなと思います。

(大きな乗りもの 2011年7月号より)

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